第163回芥川賞受賞作品!高山羽根子さん「首里の馬」を読んだので、あらすし・感想・レビューです。
本を読まないといけないと思っても、何から読んでいいかわからないってあるじゃないですか?
わりと指標となるのが、芥川賞、直木賞、本屋大賞などの受賞作品やノミネート作品は、選びやすいですよ。
ボクは、本屋大賞の作品を参考にして、よく本を読んでいますよ。
今回は、芥川賞受賞作品「首里の馬」の感想・レビューです。
「首里の馬」というタイトルからして、沖縄が舞台だと思ったので、迷わず、本屋さんに行って、買ってきました。
「首里の馬」は、7月25日に初版発売されたのですが、売り切れの書店が続出です。
本屋に出向くよりも、ネットで購入した方が確実に手に入ります。
早速、読んだので、あらすじからGO!
目次
芥川賞受賞作品「首里の馬」あらすじ
沖縄の港川(牧港の少し那覇側です。)に、順(より)さんという人が、古い家を購入して、「沖縄及島嶼資料館」というもの運営していました。
資料館と言っても、一般公開しているわけはなく、個人の資料を集めているというものでした。
資料は、順さんが集めたものですが、順さんは高齢となっており、未名子(みなこ)という女性が、資料館の整理を手伝っていました。
未名子は、本業にオンラインコールセンタの仕事をしており、資料整理は、あくまでもお手伝いと言うことで、少女の頃から資料館に出入りしていました。
未名子は、コミ障、引きこもりの少女だったので、資料館に入り浸るようになっていました。
未名子のオンラインコールセンターの顧客は、日本語が喋れる外国人で、未名子は彼らにクイズを出題すると言う仕事でした。
日本語が喋れる外国人は、世界各地に住んでいる人々で、沖縄の小さな資料館から一気に地球規模の世界観に変わっていきます。
大人になった未名子は、順さんの紙で残した資料を、スマホで撮影して、デジタルで記録しようと、資料の写真を撮り、SDカードに保存していきます。
ある日、台風一過に未名子の家の庭に馬が出現します。宮古馬と言う品種の馬です。
未名子は、コミ障で引きこもりだったので、馬の扱いを知らなかったのですが、世界各地にいる顧客と雑談の中で知恵をつけていきます。
順さんは、やがて死を迎え、その後の資料館と未名子と宮古馬、そしてオンラインコールセンターの顧客たちがなにを思い、どう行動するのか。
沖縄という歴史、文化、現代を生きる未名子がそれに向き合っていく、人間ドラマです。
「首里の馬」感想・レビュー
書き進めていくうちに、ネタバレになってしまったら、ごめんなさい。
意識して、書いてはいきますが、先に謝っておきます。
初版本は、タイトルと本文しかなかったです。
章立てもなく、目次もなく、後書きもないです。
タイトル「首里の馬」だけで、買ってしまったので、どんな内容かもわからず、読み進めていくだけでした。
この記事を読んでから、本を購入する人は、ある程度内容はわかってしまいますけどね。
順さんと「沖縄及島嶼資料館」
順さんは、「沖縄及島嶼資料館」(おきなわおよびとうしょ)として、自分が生涯で集めた資料を保存しています。
※島嶼(とうしょ)とは・・・島々
この資料の内容は、置いておいて。
資料は、次の世代に残していくために保存し、今を伝えるエビデンス。
ここで、舞台が沖縄ということにつながる。
沖縄は、戦争を経験しており、戦争によって、文化が消失してしまった部分がある。
文化の継承をいかにしていくのかも本書のテーマになっている。
未名子は、スマホでデジタル化して、紙資料が消滅しても、資料(現代)を保存できるようにしている。
オンラインコールセンターの顧客たち
外国人向けオンライン日本語教室のようなものであろうか?
未名子は、日本語が喋れる外国人たちを顧客にクイズを出題している。
コミ障で、ひいこもりの未名子もクイズを通して徐々に外国人たちと雑談をし始めるようになる。
日本語を喋れるような外国人なので、知識も豊富で、あとで、未名子に馬の扱い方なども教えてくれる。
日本語のクイズを外国人に出しているだけなのだが、未名子もコミュニケーション、雑談を通して、成長していく。
ルールに縛り付けられている日本人は、わりと孤独で未名子に共感できる人は多いと思う。
彼らも最後に、文化継承のための大きな一役を担っている。そしてクイズとはなにを意味するのか。
順さんの紙でアナログな資料をデジタル化して、オンライン化していくなどは、いかにも現在の手法を描いている。
未来がわからないボクらにとっては、あくまでも現在の手法としか語れない部分ではありますけどね。
主人公、未名子
端的に言ってしまえば、未名子の成長を描いている内容でもありますよ。
未名子は、いかにも現代にありがちな、コミ障、引きこもり、情報弱者なんですよね。
未名子の成長物語自体は、若者へのメッセージというか、こういう生き方があるということを伝えている部分もあると思います。
時間に縛られないで、オンラインで仕事をするなど、まさにこれから日本がむかえようとする、働き方などへのメッセージもボクには感じました。
特に野望や目的はないのですが、資料をスマホでデジタル化するなども、今どきです。
未名子は普通に仕事や資料整理をしているので、あまりにも普通に感じますが、一歩引いてみると、現代の働き方やデジタル化を模しているようにボクは感じました。
首里の馬
とつぜん、未名子のまえにあらわれた宮古馬。
これはなにを表現しているのか・・・?
あまりにも唐突な登場なので、びっくりします。
首里の馬も未名子の成長の証なのか。それとも夢?
コミ障、引きこもりの未名子が、そんなことを気にしない人間に成長した証といるように感じました。
そして、順さんに引き続き、現在のエビデンスを作るという尊さのあらわれのようにも思われます。
ボク個人の感想なので、読む人の年代、心理状況によって受け取り方は大きく異なると思います。
- 文化の継承
- 現在の働き方
- 現代っ子の未名子成長と宮古馬とは
をボクは、感じ取ることができました。
「首里の馬」のまとめ
- 順さんの資料館
- オンラインコールセンターの外国人顧客
- 宮古馬
なんとなく世界観がバラバラで、展開も突拍子がないものに感じました。
しかし、最終的には、文化の継承や未名子の成長などに繋がっていくというメッセージが込められています。
ボクが感じ取った部分で言えば、30代、40代の人が読みやすいかな、と感じましたが、年配の方が読むと、ボクとは全く違う感想になるかなと感じます。
表現がストレートではないんですよ。だから読む人の年代、経験によって全く違う受け取り方になるちょっと面白い本ですよ。
今のあなたには、「首里の馬」を読んで、どう感じるでしょうか?
沖縄を舞台として面白い本を発見しました!
本を読みながらにして、沖縄気分を味わえ、家族愛に包まれている作品です。
ぜひ、「首里の馬」とあわせて読んでみてください。
沖縄を舞台としたおすすめ書籍>>「アンマーとぼくら」(講談社文庫)写真付きあらすじ
最後に、本屋大賞とは
はじめに書きましたが、本屋大賞の本が面白くて、好きです。
本屋大賞作品について、少しだけ紹介します。
「本屋大賞」は、新刊書の書店(オンライン書店も含みます)で働く書店員の投票で決定するものです。過去一年の間、書店員自身が自分で読んで「面白かった」、「お客様にも薦めたい」、「自分の店で売りたい」と思った本を選び投票します。
出典:本屋大賞
書店で働く人の投票によって、賞が決まるもので、年に1回発表されるものです。
本屋さんが選ぶ本なので、間違いないです!
今までの受賞作品を紹介します。
本屋大賞 | 作家 | |
2015年 | 『鹿の王』 | 上橋菜穂子(著) |
2016年 | 『羊と鋼の森』 | 宮下奈都(著) |
2017年 | 『蜜蜂と遠雷』 | 恩田陸(著) |
2018年 | 『かがみの孤城』 | 辻村深月(著) |
2019年 | 『そして、バトンは渡された』 | 瀬尾まいこ(著) |
2020年 | 『流浪の月』 | 凪良ゆう(著) |
過去5年間の本屋大賞受賞作品です。
なんの本を読もうか迷っている人は、この5冊をまずは、おすすめします。
特におすすめなのは、「蜂蜜と遠雷」です。
ピアノコンサートの出場者の葛藤の物語です。映画にもなっているので、ご存知の方もいると思います。
「蜂蜜と遠雷」は、本なのに読んでいるうちに頭の中で、音楽が鳴り響きますよ。
こんな体験を今までにしたことがありません。
文庫本では、上下巻と少し長いですが、すぐに読み終わること間違いなし!
「蜂蜜と遠雷」は第156回直木賞も受賞しています。
直木賞と本屋大賞のダブル受賞です。
時間のある今、読む本として、最高におすすめに1冊です!
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