有川ひろさんの「アンマーとぼくら」沖縄を舞台とした義母と息子の感動の二人旅。
過去は変わらない。
変えられるのは、今だけだ。
母と過ごす三日間。
恩返しは今からでも遅くない。
主人公は、息子である「リョウ」。
「リョウ」が小学生の時に実母と死別し、父親の再婚相手が「晴子さん」。
リョウと晴子さんの三日間の沖縄旅の話。
アンマーとは、沖縄の方言でおかあさん、子供のように無邪気な父親と息子のリョウの物語で「アンマーとぼくら」というわけだ。
沖縄のいたるところ旅をしていくので、読んでいる自分はまるで沖縄旅行をしている気分になれる。
沖縄気分に浸りつつ、感動の家族愛が描かれている。
沖縄好きな、あなたに手にとってもらいたい本です。
ここでは、写真付きであらすじを紹介します。「アンマーとぼくら」といっしょに沖縄旅行に行っている気分に浸ってください。
目次
「アンマーとぼくら」あらすじ
リョウは、実母と父親の間に北海道で生まれた。
リョウが小学4年生のときに実母が病気で亡くなってしまう。
実母が亡くなって1年も経たないうちに、父親は沖縄の晴子さんと再婚することとなり、リョウは父親と一緒に沖縄に転校することとなった。
いやいやながらもリョウは沖縄で過ごし、晴子さんに少しずつ心を開いていく。
そんな中、沖縄の台風の日に写真家である父親が海の写真を撮りに行くと言って、嵐の中、果報バンタ(沖縄宮城島)に出かけ、岩場で足を滑らせて帰らぬ人となってしまった。
晴子さんと結婚して4年の出来事だった。
その後、リョウは東京に出てて大学・就職する。
32歳になったリョウがおかあさん(晴子さん)のために沖縄に帰ってきて、三日間帰省旅行がはじまる。
物語は、帰省旅行1日目からはじまる。
一日目
32歳になったリョウが那覇空港に帰ってきた。
リョウの到着時刻が早まったせいで、遅れて迎えにきた晴子さん。
リョウは晴子さんが来るまで那覇空港の待合室でうたた寝をしてしまい、晴子さんに突然起こされる。
「なぜ沖縄にいるの?」「なぜおかあさんがいるの?」
「おかあさんの休みに付き合ってくれるって約束したじゃない」
そんな夢うつつな気分で二人の沖縄旅行は、はじまって行くのですよ。
晴子さんの水色の軽自動車に乗って沖縄の実家に向かう。
昔話に花が花が咲き、リョウが子供のころ、父親の話で盛り上がる。
リョウの子供のころ、まだ北海道にいたときの回想シーンもあり、リョウは昔のことを思い出す。
沖縄の実家で昼食を食べた後、ガイドをしている晴子さんの案内で親子二人の沖縄旅行がはじまる。
はじめに訪れたのは斎場御嶽!
斎場御嶽(セーファーウタキ)
今は世界遺産である斎場御嶽であるが、リョウが小学生のときは、まだ世界遺産ではなかった。
リョウが小学生のときにはじめて斎場御嶽に来たときの話で、昔を懐かしむ。
斎場御嶽の入り口の屋台で似顔絵を描いてくれる画家がいて、大人になったリョウと晴子さんの似顔絵を描いてもらう。
御嶽(ウタキ)とは、神様が降りてくる場所。地元の人がお祈りを捧げたり、お祀りを行う場所。
沖縄には御嶽と言われるところがたくさんあり、信仰が厚い県民性ですね。簡単に言えば神様を信じているということです。
斎場御嶽は、世界遺産認定されてから観光客が殺到し、ゴミや踏み荒らしなので問題になっています。
沖縄の人は、神様がおわす場所だからそっと静かにそっとしておいて差し上げようと思っています。
似顔絵を持って次に向かうのは、万座毛!
万座毛
斎場御嶽から万座毛に行くのは遠いと思うけど、晴子さんチョイスは、万座毛でした。
万座毛でも子供のように無邪気な父親の失敗談が続々。小学生のリョウよりはしゃぐ父親のせいで通報沙汰にも(笑
沖縄の西側、東シナ海は波が荒く、荒波により岩が侵食されていってしまってます。
岩に大きな穴が開き、象の鼻のような形になってしまった岩があるところが、万座毛です。
万座毛をぐるっと回ると、目の前にANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートのプライベートビーチが広がっています。
ANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートで結婚式を挙げる人は、万座毛からのANAインターコンチネンタル万座ビーチリゾートをバックに結婚写真を撮っていることが多いですね。
今はリョウたちがいった時とは違って、駐車場とかはきれいに整備されているようです。
1日目のリョウと晴子さんの夕食は、ステーキハウスでTボーンステーキ。お店の名前は出てこなかったですが、わたしが思うにステーキハウス88だと思い込んでいます(笑
二日目
二日目の朝食は、晴子さんお手製のポーク卵!ポーク卵は玉子焼きに焼いたSPAMを添えたものです。
わたしは、はじめてローカル食堂でポーク卵を食べたときは、こんな手抜き料理が売り物か?って驚きましたよ。
おかあさんの手抜き朝食?というイメージでしたが、やはり沖縄の朝食はポーク卵でしたね。
二日目はあいにくの雨。
しかし、ガイドをしている晴子さんは、雨なら雨の日の遊び方があるといって、向かうは玉泉洞!
玉泉洞
玉泉洞って沖縄南部、南城市にあるおきなわワールドの向かいにあるんじゃなかったけ?と私は記憶していたのですが、そこはガンガラーの谷でしたね。
玉泉洞は、おきなわワールドの中にありました。
リョウが小学生のときに玉泉洞に行った時は、マングース対ハブのショーをやっていたようです。
いまでは、動物愛護法でマングース対ハブショーはやってなくて、マングース対エラブウミヘビの競争をやってるそうです。
玉泉洞は鍾乳洞です。ガンガラーの谷も鍾乳洞です。
沖縄はサンゴ礁の島で石灰質が多いから鍾乳洞が多いということかな。
リョウと晴子さんのランチは、北谷町でベーコンチーズバーガー。ここもお店の名前が書いてないので、予測不可能。
北谷町はアメリカンビレッジがあるからハンバーガーと言ったらアメリカンビレッジかな?とも思いますが、違うような感じがします。
一日目、二日目とも外食は、晴子さんのリクエストで晴子さんが食べたいお店をチョイスしています。
父親と三人で行った懐かしのレストラン、懐かしのメニューを晴子さんは頬ばっていましたね。
ランチの後は、やちむんの里!
やちむんの里
やちむんとは、沖縄の方言で陶器のこと。
もともと那覇の壺屋(やちむん通り)にいた窯元が、読谷村にうつり、やちむんの里となっていったみたいです。
やちむんの特徴は、鮮やかな青を基本に魚や植物の絵が描かれ、ダイナミックな模様になっています。
内地の陶器とは、雰囲気が違うので、沖縄土産として人気の逸品です。
リョウと晴子さんは、残波岬に行く途中にやちむんの里に立ち寄ります。
父親が無邪気にオジギソウで遊んでいたことを思い出しつつ残波岬に向かいます。
残波岬
残波岬は、父親と晴子さんがはじめていった沖縄の観光地。
父親がはじめて沖縄に降り立った日は雨。
ガイドの晴子さんは、雨の日の荒々しい沖縄の風景があると、残波岬に向かう。
残波岬にあらがう波に父親は感動して、何時間も写真を撮り続けて、それを見守る晴子さん。
それが、父親と晴子さんとの出会いね。
リョウが小学生で実母の三回忌の前、やはり天気が悪い日に父親とリョウは残波岬に出かける。
三回忌に北海道に帰りたいリョウと死んでしまった実母の三回忌より晴子さんとの生活を優先したい父親とで、残波岬で大ゲンカをする。
大ゲンカの末、リョウも父親の気持ちをくみとり、この日から晴子さんを「おかあさん」と呼ぶようになる。
実母は、「お母さん」である。
残波岬は、リョウの家族にとって思い出深い地なのである。
三日目
いよいよ、旅行も最終日になります。
リョウは、3日間携帯電話も鳴らないし、メールも来てない音を確認して不審に思いますが、気にせず、おかあさん(晴子さん)との旅行を楽しみます。
おかあさん、父親との悔いがないように、おかあさんが楽しむがままに旅行をします。
勝連城跡
琉球王国って沖縄の土地の有力者を統一して王国として誕生したんですよ。
沖縄に城(グスク)が多いのは、土地の有力者が城をもっていたからいまもなお城跡として残っているんです。
その中でも琉球国統一に最後まで抵抗した阿麻和利という人が住んでいたのが、勝連城。
勝連城は大きいですし、上に登ると見渡す限り海で景色もきれいです。
世界遺産として、いくつか城跡はありますが、勝連城はぜひ行ったほうがよい城跡です。
リョウとおかあさんも勝連城に登って景色を楽しみます。
浜比嘉島
リョウとおかあさんは、勝連城跡から海中道路を通って、浜比嘉島にはいります。
浜比嘉島って観光旅行では、あまり行かないかもしれませんが、古民家食堂があったりシルミチューのパワースポットがあったります。
一応、車では行けますが、島なので海もとてもきれいですよ。
浜比嘉島には、琉球の創世神と言われるアマミキョの墓があります。浜比嘉島の東の方で、ちょこっと突き出たところです。
アマミキョはシルミキョという男の神と結婚して、浜比嘉島に住んだと言われています。
この二人が住んでいた場所をシルミチューと呼んでるそうです。ややこしい…
シルミチューのさきにビーチがあり、そこで小学生のころのリョウ、おかあさん、父親の家族写真を撮影しています。
数少ない家族写真を撮った場所なので、リョウ、おかあさんいとっても思い出の場所です。
浜比嘉島からとなりの宮城島まで移動すると果報バンタがあります。
果報バンタ
沖縄本島一番の絶景と言っていいほどの果報バンタ。
しかし、リョウとおかあさんにとっては父親を亡くした場所です。
二人は無言でたたずみます。
父親が亡くなった日の想いに浸る。
リョウは父親が亡くなってから一度も果報バンタにはきていない。
青い空、青い海、白い波、ターコイズブルーの海。
沖縄は、サンゴ礁に覆われているので、波がたつのは少し沖の方になる。
リョウは、波を見ながら「まるで竜だね」とつぶやく。
そして、おかあさんは、リョウにお父さんが撮りためた海の写真を見せる。
沖縄は「竜が守る島」と…
首里城
おかあさんが最後に選んだ地は「首里城」
2019年10月31日に火災で燃えってしまった首里城。
沖縄といえば、首里城か美ら海水族館というくらい有名な観光地ですよね。
リョウとおかあさんは、首里城を見た後にもうひとつ見たい場所があるとおかあさんが言い、歩き始める。
金城町石畳道
首里城から歩いて、着いたところは、金城町石畳道。
じつは、話には、金城町石畳道は出てこないのだが、私の勝手の想像のもと、最後の地は金城町石畳だと思う。
アンマーとぼくらを読んだ皆さんどう思いますか?
なぜ、おかあさんがここへリョウを連れてきたかというと、父親がおかあさんにプロポーズをした場所だからである。
おかあさんのこの告白を聞いて、二人の旅が終わっていく。
ニライカナイ
ニライカナイとは「沖縄の海の向こうにある、神様の国」
極楽浄土ともいうべきか、沖縄では人はニライカナイから生まれて、死んでニライカナイに戻るとされています。
先に亡くなった父親はニライカナイで、おかあさん、リョウをニライカナイで待っている。
いつかニライカナイで合いましょうと。
感想
32歳のリョウと小学生のときのリョウの思いが入り交じって、沖縄旅行と時間旅行で話が進んでいく。
そのうち、いま32歳のリョウなのか、小学生のリョウなのかわからなくもなってるところもある。
小学生の頃わからなかった気持ちが、家族とはいえ、リョウ、お母さん、おかあさん、父親の各々の思いが。
32歳のリョウには理解できるようになってきている。
小学生のリョウが思う家族とは、32歳になったリョウが思う家族とは。
二人の女性を愛した父親はどんな人なのか。
なぜ、32歳になったリョウが三日間おかあさんと旅をしたのか。
リョウ、お母さん、おかあさん、父親の家族愛につつまれた作品です。
久しぶりに本を読んで泣きました。
沖縄に観光に行ったことがある人、息子を持つおかあさんにぜひ読んでいただきたい一冊「アンマーとぼくら」です。
最後に、有川ひろさんは有川 浩さんと同一人物です。
有川 浩さんは、「図書館戦争」シリーズ、「三匹のおっさん」シリーズを書いた方です。
次の作品も沖縄を舞台にした芥川受賞作品です>>第163回芥川賞受賞作品!高山羽根子さん「首里の馬」感想・レビュー
沖縄旅行をもっと詳しく解説しています。参考に読んでみてください。
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